テレビでプロ野球、阪神タイガースの野球中継を見ていると、試合の合間にカメラが観客席を捕らえ、ファンの熱い応援の姿がクローズアップされる。お父さんの膝で同じように虎ファン、アイテムの縦縞シャツを着て小さなメガホンを訳なく振っている幼子の姿や少年が贔屓の選手に夢を託して大声で応援している姿は微笑ましい。まるこい中年の小父さんが本当にうれしそうに拳を突き上げ応援の王道を貫く姿、茶髪の生きのいい若者男女が色々なプラカードを掲げたり、パフォーマンスをお祭り気分で繰り広げる様は、活気にあふれている。そばで老夫婦がこの熱気を楽しみつつ静かにグラウンドに目線を向けている。もし、街中で会ったとして、きっと澄まし顔で闊歩しているであろう美人が、お目当ての選手名を書いたカードを両手で掲げ左右にリズミカルに振っているのも昔の球場風景を知るものにとっては新鮮である。
甲子園にはこうした応援気分に膨れ上がる5万人近い老若男女がそれぞれの想いを託しつつ、タイガースというチーム応援に集っている。この応援の姿は、近頃、経済活性や事業創出に関して言われる「連携」という概念を具現しているのではないかと思わせる。ファンにはタイガースの活躍、優勝という目標、希望が明確にあって、その為に一人一人がチケットを買って経営支援をし、現場に駆けつけそれぞれの出来る事で応援する。ストレス解消の人もあれば、プロの技を学ぶ・楽しむなど、それぞれの目先の利得はあるだろうが、とにかくも大勢の人々がタイガースの優勝ということになれば何百億円の経済波及効果があるといわれる。
現実社会では、産学官の連携、地域の連携、企業の連携などが盛んに喧伝されるが、いずれもそれぞれの立場に個室、飛翔できず失敗に終わるケースが多い。タイガースファンの様な透明な情熱の集積が、もし、地域コミュニティや町おこしにおいても結集することが出来れば、大抵のことは成功するだろう。わかりやすい「夢」、夢に向かっての楽しい共同体験と学習が程よく出来るコラボレーションシステムの創造は、タイガースファンのラッキーセブンに宙を舞うカラー風船の中に隠されているのだろうか。
これからのデザイナーはその秘密を明確にする役割を担っているのかもしれない。
Vol.1「応援」
HAS建築研究所/廣瀬 滋